お正月も真っ只中、帰省の途中に立ち寄ったコンビニでもう恵方巻きの予約が始まっていることに驚いた管理人のつむぎです。
いや、ほんと早すぎですよ。
まだ気持ちはお正月なのに、2月4日の節分ですよ。
確かに予約をするのであれば、早めにして損はありませんが・・・
ちょっと早すぎでウンザリしました。
そんなことで、来たる節分の日には、今では全国どこでも変える恵方巻きをかぶり付く人も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな恵方巻きの歴史と全国に広がったビジネス展開について紹介します。
目次
節分における恵方巻きの丸かぶり
私は東海の生まれでしたが、そもそも小さい頃には恵方巻きの文化なんかありませんでした。
節分といえば、豆まきをした覚えはありますが、恵方巻きをかぶりついた記憶はありません。
恵方巻き一本食べたら、小さい頃ならすごくお腹いっぱいになったはずですから覚えていないということはなかったんだと思います。
実際、調べてみると、全国に広まったのはここ十数年間であり、古くからある文化ではないのです。
発祥は大阪らしいが、定かではない
恵方巻きの発祥は諸説あり、どれが本当かは定かではありません。
- 大阪の商人たちの商売繁盛と厄払いの意味合いで始まった
- 遊郭の女性が男性のアレに見立てて、かぶり付くのを見た人が発想した
などなど。
2つ目がルーツだとしたら、子どもには大きくなるまで話せませんね(笑)。
ただ、どの説でも共通することは大阪の商人の中で、習慣化してきたことです。
戦前、大阪鮓商組合が盛り上げ、一部で定着
大阪鮓商組合が販売促進の目的でこの習慣に目をつけました。
そして以下の内容のチラシを配りました。
巻壽司と福の神 節分の日に丸かぶり
この流行は古くから花柳界にもて囃されてゐました。それが最近一般的に喧傳して年越には必ず豆を年齡の數だけ喰べるやうに巻壽司が喰べられてゐます。
これは節分の日に限るものでその年の惠方に向いて無言で壹本の巻壽司を丸かぶりすれば其年は幸運に惠まれると云ふ事であります。
宣傳せずとも誰云ふともなしに流行って來た事を考へると矢張り一概に迷信とも輕々しく看過すべきではない。
就ては本年の幸運をば是非平素御愛顧蒙る御得意樣にも斯樣な事も御承知能ひ永續の御繁榮を切に乞ふ譯であります。
一家揃ふて御試食を願ひ本年の幸運をとり逃さぬやうお勸め申します。
昭和七年節分二月四日 惠方西北(亥子ノ間)
幸運巻壽司 一本金拾五錢 大阪鮓商組合— 大阪鮓商組合 チラシ
簡単に内容を説明すると、
「節分には豆を歳の数だけ食べるように、巻き寿司を食べる風習もあります。その歳の干支の方角を向いて、無言で一本丸かぶりすれば、幸運に恵まれるそうです。迷信と思わず、家族と一緒にこの運を逃さないようにしましょう」
となります。
このチラシのお陰もあり、大阪のほんの一部の地域で、節分の恵方巻きの文化が定着したそうです。
戦後、恵方巻き復活を試みる
その後、そんな一部の地域で定着した恵方巻きは戦後数年間、廃れてしまいました。
しかし再度、大阪鮓商組合が復活を試みます。
今度は海苔屋さんともタッグを組んで挑んだそうです。
「節分と巻きずし」
本日巻きずし有りという広告を見たが(中略)、おもに花街で行なわれ、新こうこうが漬かる時期なので、その香の物を芯に巻いたノリ巻を、切らずに全(まる)のまま、恵方のほうへ向いて食べる由。老浪華人の塩路吉兆老も今日まで知らたんだ。(中略)もちろん、私も初耳だ。普通の町家ではあまりやらないようだ。— 篠田統『すしの本』
しかし、一般家庭までは普及せず、花街だけの存在だったそうです。
しかし、1970年代から、だんだんとメディアにも取り上げられるようになったことと、イベントを起こして、恵方巻きを食べてもらったことで、大阪では再び定着して行きます。
全国展開はセブンイレブン
ここで、大手企業による恵方巻きが始まります。
ファミリーマートが大阪、兵庫で展開。
ただし、これは地域限定。
同時期に寿司店では「小僧寿し」が「縁起巻き」として全国展開するために毎年キャンペーンを実施。
しかし、ブームとならず…
セブンイレブンも情報を聞き、1989年に広島の一部地域で恵方巻きを販売。
年々エリアを拡大して、1995年には西日本。
そして1999年には全国展開しました。
結果、このセブンイレブンの動きに合わせ、他の小売店、スーパーも恵方巻きに乗っかり、今のようになったと言われています。
恵方巻きビジネスの展開
恵方巻き自体、大阪の商人魂の塊から生まれた
恵方巻き自体、そもそもルーツを辿ると大阪の商人に行きつきます。
そしてそれを目につけた、商組合が盛り上げようとしました。
初めは商人の商売繁盛、厄払いの意味合いで始まりました。
でもこれって、完全に商売・・・つまりビジネスの成功を祝って行なったことです。
さらに恵方巻きを広げれば、ビジネスになると思ったからこそ、商組合が盛り上げようとしたのです。
つまり、恵方巻きのルーツはどうであり、恵方巻きは商人魂の籠もったビジネス戦略なのです。
古き良き伝統は作られていた
先ほど、大阪鮓商組合のチラシを参照しました。
あそこには「古くから花街にありましたよ」って書いてます。
けど、そんなに歴史は古くありません。
さらに戦後を考えれば、大阪中に広まったのも1970年代後半から、歴史は比較的浅い風習です。
また恵方巻きは「土用の丑の日」のうなぎの販売戦略に対抗して作られたとも言います。
土用の丑の日の鰻といえば、かの発明、平賀源内が夏でも鰻が売れるようにするために考え出したと言われています。
よく考えてみれば、寿司ってお祝い事に食べることはありますが、〇〇の日に食べることってあまりないですよね?
ひなまつりのちらし寿司って思ったけど、これもルーツが不明です。
つまり、恵方巻きも寿司の販売を上げるために、考え出した販売戦略であり、古い歴史は作られていたのです。
日本人はイベント好き
ハレの日、ケの日という言葉をご存知ですか?
日本の伝統的な時間を表す言葉です。
ハレ:お祝いや特別の日
例:晴れ着、晴れ姿、
ケ:普通の日
今はほとんど使われない言葉です
日本の文化として、ハレの非日常を非常に特別に思い、そして盛大にする意識があります。
確かに大切な日は盛大にしたいですよね。
これを大切にしてきた文化があります。
つまり、土用の丑の日の鰻も、節分の恵方巻きも、ハレの日…つまり、イベント事にすることで、楽しめる風習にするとともに、ビジネスの成功につながるのです。
しかし、これもハレの日を大事にする日本文化であり、それは今でいうイベントが大好きというわけです。
恵方巻きは利益率がいい・・・でも
そして、恵方巻きは寿司の中では利益率がいいです。
最近はいろんな種類がありますが、一番よく出回っているのは具として
- かんぴょう
- キュウリ(レタス・かいわれ)
- 伊達巻(だし巻・厚焼き卵)
- ウナギ(アナゴ)
- 桜でんぶ
- シイタケ煮
が使われています。
ウナギ、アナゴは少し値が貼りますが、他のものは、生の魚介を乗せたにぎり寿司や押し寿司に比べると、ネタのコストは高くありません。
そのため、商売としても寿司の中で恵方巻き、つまり太巻きを売るのはお店にとって売上や利益を考えた時、いいものなのです。
ただし、
昨年の記事にあるように、年々この恵方巻きの在庫があまり廃棄されることがニュースとして問題提起されるようになりました。
予約購入率が10%のため、90%がその日、店頭で買います。
節分の恵方巻きのイベントは1日限りです。
売り切れて機会損失するよりは、お店側は少し余るくらい、つまり多めに発注します。
結果、予想よりも売れずに大量廃棄になっているのです。
バレンタインのチョコレートとは比べものにならないくらい日持ちしないので、仕方がありません。
またコンビニやスーパーに恵方巻きを卸す惣菜メーカーも大変なことが伺えます。
だって、普段はそんなに作ることのない恵方巻きを大量に作らなくてはいけないのです。
恐らくその1日のために、機械を導入するなんてことは難しいので、人海戦術で乗り切っているのかもしれません。
最後に
廃棄処分しても恐らく飼料などにリサイクルされます。
しかし、小売店の売り上げが上がるのはいいことですし、恵方巻きで願をかけるのもいいと思います。
しかし、恵方巻きは歴史が浅く、周りにも特にやらないという人もいます。
豆まきほど浸透していません。
文化、ビジネス、そして現代の問題を考慮すると、少し見直した方がいいか、あとは予約購入して当日の販売数を減らす方がいいのかもしれませんね。