【解説】加工食品に使われている酵母エキスは安全?危険?

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酵母エキス、皆さんは聞いたことはありますか?

この酵母エキスはうま味素材として加工食品などさまざま食品に使用されている食品素材です。

しかし、さまざまな雑誌やサイトで危険、本当は食品添加物のようなのに無理やり食品扱いにされているってすごく不安を煽るような表現をされているんです。

例えば、「酵母エキス」とGeogleで検索してみましょう。

小さくて分かりにくいかもですが、wikiとアサヒなどのメーカーの他、上から2番目と5番目が実は危険と言っているサイトになります。この2つのサイトはどちらも企業ですが、他にも個人ブロガーさんや栄養士さんにでもよく書いていたりするんです。

今回は、この酵母エキスについて、初めて聞いたと人でも分かりやすいように説明していきます。

酵母エキスとは

酵母エキスとは、酵母の利用形態のひとつで菌体自体を分解抽出した成分のことである。主成分としてアミノ酸や核酸関連物質、ミネラル、ビタミン類を含み「調味料」「微生物培養の培地」「家畜飼料」「健康補助食品」などに用いられる。

引用:wikipedia

酵母や酵母エキスはうま味であるアミノ酸や核酸物質を多く含むため、食品分野では、今回の話の中心であるうま味調味料として使用されるだけでなく、ビタミンミネラルが多いことから、健康食品として利用されます。また医薬に近いものとしても使われます。

スーパードライで有名なアサヒビールのエビオスは昔から有名ですね。

これらはビールを作った後の酵母の利用によって開発された製品ですね。

酵母とは何か

酵母とは、多くの発酵食品を作るために利用される単細胞で生きる微生物の一種です。

糖を分解してアルコールを作ることから、主にお酒を作ることに利用されている、とっても身近な微生物です。

酵母を利用してできる食品

・酵母の発酵を利用する食品

  1. 酒(ワイン、ビール、日本酒など)
  2. パン
  3. 醤油
  4. 味噌
  5. 酢(お酒を発酵)

・酵母の菌体を利用した食品

  1. 酵母エキス
  2. 健康食品(コエンザイムQ10、ビタミン剤、ミネラルサプリ、食物繊維など)

・食品以外

  1. 微生物培地
  2. 飼料(栄養目的)

酵母エキスは加工食品は多く利用されますが、一般にスーパーなどでは酵母エキスとして販売はほとんどされていないため、日本では馴染みがありません(馴染みがないから危険と思う気持ちはわかります)。

しかし、海外ではそんなことはなく、現在ユニリーバ社がマーマイ(類似品:ベジマイトなど)と呼ばれる製品で長い歴史があります

上記のマーマイトの場合、イギリスでビール醸造が始まった1680年代には発酵後に余ったビール酵母を利用する形で始まったと言われています。

そして戦時中にはビタミン補給という形で栄養サプリ的な意味でも摂取していました。

また2011年にニュージーランドで地震が起き、マーマイト工場が壊滅的な被害を受けた際、マーマイトの品薄状態を映画「アルマゲドン」にちなんで「マルマゲドン」なんて呼ばれてました。

ニュージーランドの朝食襲った「マルマゲドン」、1年ぶりに解消

それくらい、特定の地域には根ざしてきた食品なんです。

だから「知らない=怖い」の認識を変えて欲しいなって思います

酵母に危険性はあるのか?

食品用に利用されている酵母の近縁種であるカンジダ・アルビカンスはガンジダ症を発症します。

食品で利用されるサッカロマイセス・セレビシエは上記の症状は発症しません。

しかし、稀にですが、酵母にアレルギー反応を起こすことがあります

しかし、アレルギー反応を起こす割合もかなり少ないため、国内ではアレルギー表示の義務はありませんし、各種アレルギー検査でも酵母を項目とすることもあまりありません。

つまり、アレルギーを除けば、酵母や酵母エキスは健康被害を及ぼすリスクが極めて低く、かつ栄養価が高い食品であり、安全性は高いといえます。

どんな酵母をエキスに利用するのか

上記のマーマイトのように、酵母エキスは発酵後に残る酵母を再利用する形で始まりました。

現在も発酵終了後の酵母を利用するものもありますが、安定的な生産や発酵食品には使わないけど、栄養価が高い、特別な味がすると言うことで使われているものがあります。

酵母エキスの原料になる3種類の酵母を紹介します。

ビール酵母

マーマイトやエビオスに使われている酵母です。

私たちが普段のむビールは澄んだ黄金色をしています。

でも発酵が終了したばかりのビールは酵母菌がたくさん入っているのでかなり濁ってます。

この濁っているビールの原酒をろ過することで、飲むためのビールと酵母などを分けます。

このビール酵母を利用して酵母エキスに使用します。

おそらく酵母エキスの中でももっとも歴史が古いです。

パン酵母

次にパン酵母。

パンを作るために使う酵母です。

つまり、これです。

イースト(yeast)は酵母を英語表記した名前なので、全く同一ですね。

パン酵母の歴史はパンの歴史であるため、酵母自体はものすごく長い食経験があります。

ビール酵母はビールを作った後の酵母を回収して使用しましたが、パン作りでは酵母を回収することはできません。

そのため、上記のパン用のドライイーストを製造するために酵母を作るのと同様に、エキス用に酵母を増やし、その酵母分解抽出したものが、パン酵母由来の酵母エキスになります(ビール酵母でも同様の作り方をする場合もあります)。

トルラ酵母

一番聞き慣れない名前ではないでしょうか。

トルラ酵母は1900年代第一次世界大戦中のドイツで栄養補給(特にタンパク質)目的に培養が開始された酵母で、その後食品や飼料として使われてきました。

これもパン酵母同様にエキスを作るために菌体を培養します。

他の酵母よりも肝機能に必要なグルタチオンを多く含むため、肝機能向上や美容目的でも利用されることのある酵母です。

以上3種類が酵母エキスに利用される酵母です。

日本では日本酒や焼酎、醤油や味噌などの製造に酵母は欠かせないものです。酵母自体を食べることはなかったかもしれません。

しかし世界を見渡せば、一番歴史の短いトルラ酵母でさえ、100年以上もの間、人々の食に関わってきた歴史があるのです。

酵母エキスの製造方法

酵母は昔から使われているけど、エキスにする製造方法が危険かもしれない?

そう思うかもしれませんので、製造方法を見ていきましょう。

製造は分解→分離(遠心分離など)→乾燥・濃縮の流れです。

分離、乾燥の行程は他のエキス(肉エキス、魚介エキス、鰹節エキスなど)と同様なので、酵母エキスに特徴的な最初の分解のところに注目して4つの方法を解説します。

酵母の自己消化作用

酵母は自己消化することが知られています。

自己消化:生育の止まった菌体の構成成分が自菌の酵素によって分解され、菌 体外に放出される現象

簡単に言うと、自己消化とは、自分の持ってる酵素で自分を壊す現象です。

自己消化は微生物でよく見られる現象です。

人を含めた動物でも亡くなった後、胃などの消化器官で自分で自分を溶かす作用が見られます。

この方法は酵母がもともと持っている作用を利用する方法で、製造する際には温度条件や水分値などの条件を整えてあげれば、エキスにすることが可能です。

酵母はタンパク質分解酵素、核酸分解酵素を持っているため、この自己消化によって、うま味を呈するアミノ酸(グルタミン酸など)、核酸(イノシン酸)などを放出します。

つまり、酵母エキスは酵母の持つ成分を分解することで、強いうま味を持った素材になるのです。

この点は残りの3つの方法でも同じです。

酵素分解法

2つめの方法は外から酵素を加えることで、分解させる方法です。

酵母は自らの持つ酵素で自己消化しますが、酵素を入れることで、菌体の自己消化を促し、タンパク質の分解を助けることで、より短い時間で、高効率に分解させることができる方法です。

また酵素は分解を促す結合が決まっていることが多いため、特定の部位で分解し、目的とする味や風味を出すことも可能になります。

補足

酵素:生体内で作られる触媒(自身は変化しないが、反応を促進する物質)。主にタンパク質からなり、立体構造によって特定の部位に反応を促進する。

ここで使用される酵素はどこからくるのか?

食品用に利用させる酵素は、ほぼ微生物由来です(パイナップル由来のパパインも使うことがあります)。

酵母エキスを製造するにはタンパク質分解酵素、核酸分解酵素、細胞壁分解酵素などが必要です(具体的にはメーカーによって異なります)。

これらの酵素はコウジカビ(米麹など)、酵母、枯草菌(納豆菌を含む)、クモノスカビ(テンペ菌)など、食品に利用させる微生物由来のものになります。

ちなみに酵母エキス製造では特にこの酵素分解方法で行われています

熱水分解法

古典的なタンパク質の分解方法になります。

タンパク質は熱に弱く、また熱を加えることで分解反応がはやくすすみます。

この方法を利用することで自己消化よりもスピード早く反応させることができます。

ただし、最近この方法は多くありません。

酸添加法

熱水分解法と同様に化学的に分解を促進する方法です。

タンパク質は強力な酸と水があると、酸加水分解によって結合が切れ、短いアミノ酸に変化します

分解に使用する酸は主に塩酸です。塩酸は胃液の主成分でもあり、強力な酸として理科で習ったことがあると思います。

酸で一気に分解するため、他の方法よりも短時間でかつ低価格で分解することができます。

ただし、分解したばかりの酸性状態では人に危険な状態なため、アルカリ性の溶液を加えて中和させています。

強酸の塩酸やアルカリ性物質を利用するため、この方法は試薬の管理や排水の処理が他の方法に比べて大変な作業となります。

そのため、酸添加法は最近はあまり用いられていないと聞いています。

また酸添加法では製造中に、発ガン性成分であるクロロプロパノールが発生するリスクが言われています。

この物質は食品の加熱などによってもできる物質。

日本では特に醤油やアミノ酸液で危険視された物質です(醤油では極微量で健康に害がでないことが分かっています。この物質で被害が出るより先に高塩分で健康被害はあるでしょう)。

このクロロプロパノールは日本の農林水産省を始め、各国でも輸出入の段階で厳しくチェックしている物質です(食品中のクロロプロパノール類及びその関連物質に関する情報:農林水産省

日本以外の国の評価でも、酵母エキスからはほぼ検出されていません(2019/07現在)。

酵母エキスが危険という話を検証

ここからは酵母エキスを危険と叫ばれる方々が指摘するポイントを検証していきましょう。

酵母と酵母エキスは別物で、酵母エキスは危険だ

酵母エキスは酵母から分解抽出することで作られています

つまり、分解抽出の過程で何かしらの危険物質が発生していないと危険ということは難しいいです。

なぜなら、そうでなければ、原料である酵母も危険だからです。

この話を例えるなら、

”生のリンゴは安全で、皮と種を取り除いて加熱したリンゴジャムは危険と言っている”

ようなものです

しかし、現在、酵母エキス単体に、健康に害を及ぼす成分ができているという論文や報告はありません

原料の酵母菌はエキスのために培養して食品由来ではない

ビール発酵後の酵母を利用した酵母エキスを除いて、酵母エキスの多くはエキス用に培養した酵母です。

しかし!そのどこが危険なのでしょうか?

敢えて強く言う理由は、パン用のドライイーストも酵母を増やすために純粋培養した酵母です。

そして酵母を使用した健康食品に使われる酵母も同じです。

さらに言えば、日本酒に使用される酵母も、独立行政法人酒類総合研究所が必要な酵母だけを増やす純粋培養した協会酵母を利用しています。

このように純粋培養した酵母は今は一般的な方法であり、安全性は高いのです。

危険視する人の中には、培養する培養液を危険という声があります。

培養液には「砂糖を作る際に残ったサトウキビのかす(廃糖蜜)やアンモニア化合物を使用するから」だそうです。

何も知らなければ、危険なように思いますが、食品で使われる酵母エキス製造にはまず食品用グレードの原材料を使います

サトウキビのかすを使うのは食品ロスの面からみて、有効活用できて良いです(ちなみにサトウキビのかすである廃糖蜜はラム酒の原料として使われています。危険と叫ぶ人は敢えてこの情報を載せていないように思います)。

アンモニア化合物は酵母の餌になるため、酵母エキスに残るわけではありません。

またアンモニア化合物自体はベーキングパウダーやラーメンの麺をつくるかんすいとしても使われているため、酵母エキスがダメなら、パンケーキなどの多くのお菓子類やラーメンも危険なものとして扱う必要があります。

ちなみに天然酵母を利用する方法ももちろんあります。

しかし天然酵母の利用は他の微生物の混入のリスクや予想外の代謝を起こす場合があり、食品として安定的で安全の保障をするのがなかなかに難しいものです。

そのため、天然酵母を利用する場合も、単一の菌に分け、それを純粋培養することが一般的な方法として用いられています。

原料の酵母菌は突然変異させている

紫外線やガンマ線照射によって突然変異を引き起こした酵母を使うのは危険という話です。

先に言わせてください。

突然変異を誘発する方法はすでにいろんな食品に用いられている方法です。

具体的に言えば、微生物(酵母(エキス用、ビール用、清酒用など)、乳酸菌など)、お米など・・・全てあげるのは難しいほど多いです。

すでにいろんな食品に使用されている方法だからといって安全な技術というわけではありません。

食品メーカーも、生産者も国や地方自治体の研究者もそれは分かっているはずです。

突然変異はどこにDNAのどこに変異が入るか予測できないため、予想外の反応を起こす場合があるからです。

そのため、突然変異させた微生物や作物は、長い時間をかけて安全性の評価を行います

結果、危険性が極めて少ない、安全であると評価できたものだけが世に回っています。

この突然変異自体は自然でも起こる現象です。そのため、天然酵母がある種の酵母の突然変異型ってことはよくあります(正確にはわかりませんが)

酸分解法は危険な方法だ、発がん性物質ができる

酸添加法(酸分解法)は上記に書いたように排水処理が面倒で、最近は少ないです。

また発がん性物質であるクロロプロパノールは日本を含め多くの国で厳重に調査している物質です。

そのため、関係する企業は製造方法を見直し、クロロプロパノールが出来ないように、またもし出来てしまったとしても除けるような方法を研究しています

そのためか、酵母エキスからほとんど検出されていません(料理中にもできることがあるので、ゼロにはできませんが、健康被害でるような量では全くありません)。

具体的に危険視するのであれば、ぜひ分析して、その評価結果を見せて欲しいですね。

酵母エキスは味が強く、味覚破壊を起こす

酵母エキスは食品のうま味を強化する食品素材として使用されます。

うまみ成分の量も多いため、酵母エキスそのものを口にすると味が強くてキツイです。

酵母エキスのようなうま味が強いものを日頃食べると、味覚の感度が悪くなる、可能性があります

感度が落ちると、薄い出汁の味を感じられなくなり、より濃い味を求めるようになります。

例えば、お吸い物の出汁の味が分からないので物足りなく、塩や醤油などを加えるようになる、ようなイメージです。

味が濃いものが増えれば、動脈硬化や高血圧などの生活習慣病のリスクを高めます。

この点については酵母エキスそのものが悪いよりも、日頃食べているものといった食習慣の方が問題になります

ちなみに危険を煽る記事やサイトでは、”味覚破壊”という言葉をよく使います。

この言葉、残念なことに、本当に危険を煽るだけの不明確な言葉です。

というのも味覚破壊という言葉、特に定義もなくどのような状態を指しているのかわからないためです。聞くと不安になる言葉ですが、医学用語でもありません。

そのため、このような言葉を安易に使うのは、信用しないほうがいい、というのが私の見解です。

最後に:そもそも食品の安全とは?

このように酵母エキスは一般家庭では使用されませんが、多くの食品のうま味素材して利用され、長い歴史があり、色んな国で安全性が確認されている食品素材になります。

またビタミン、ミネラルが豊富でサプリメントや健康食品にもよく利用されています。

ちなみに酵母エキスは独特の風味や後味があります。

この後味を苦手と感じる人は多い気がします。実際、酵母エキスを避けるようにしたら、変な後味が無くなったという声は時々聞きます。

私も嫌いではありませんが、酵母エキスの味は敏感にわかります。

この点は個人の味の好みになるので、危険、安全という話とは全く別だと思います

このサイトでは今後も、あまり知られていない食品素材、食品添加物について解説していきますが、

そもそも食品の安全とはなんでしょう?

今回の酵母エキスもそうですが、ある食品を危険視する人には次のように考える特徴があると思います。

  • 天然のもの、手の加えられていないものは安全
  • 良くわからないものは危険
  • 化学物質は危険
  • 身近にないものは危険
  • 大手メーカーのものは危険(儲け主義)

食品メーカーの研究職として働く私の意見として、

たとえ天然のものでも扱いを1つ間違えれば危険なものになる

ことを知って欲しいです。

  • 私たちに身近なジャガイモも芽を取り除き忘れたことで、毎年のように食中毒を引き起こしています
  • 消費期限が切れたお肉で食あたりを起こすことだってあります
  • 銀杏を一度に大量に食べれば、痙攣や嘔吐を引き起こします

これらは一例ですが、

天然の食材であっても、食品添加物であっても

正しい取り扱い、

そして食べ過ぎないことが大切であり、

一つの成分の危険性だけに注目してもあまり意味がないのです。

今回の話を通して、食の安全について考えて欲しい、と願っています。