[遺伝子組み換え]GM食品で1番身近なチーズの話

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遺伝子組み換え、皆さんはどう思いますか?

中には不安に思っている人もいるんじゃないでしょうか。

特に食品分野では遺伝子組み換えについて調べると

「危険だー、病気になる、ガンになる」って書いているサイトも多いです。

誰だって危険って大きく叫ばれたら、不安になってしまいます。

そんな中、「遺伝子組み換え」は安全ですよ、って言われても信用できませんよね?

私は遺伝子組み換えに関わらず、新しい技術はどういうことかわからないから、ただただ不安や恐怖に感じてしまうのは至極当然のことだと思います。

私達も他の生き物と同じで、本質的にはリスクを回避したい、生き残りたいって気持ちがあるからです。

だからこそ、悪い面、暗い面ばかりが強調されて広まってしまうんです。

ただ、遺伝子組み換え技術のおかげで、助かる命もあるって知っていますか?

今回は遺伝子組み換えで、もっとも私たちに身近なチーズの話を紹介します。

遺伝子組み換えの良い面もぜひ見て、考えてほしいです。

チーズづくりのために、多くの仔ウシが屠殺⁉︎

チーズの歴史

チーズは人類が発明した世界最古の加工食品です。

その歴史は本当に古く、羊や山羊が家畜化された紀元前6000年ごろと言われています。

家畜のメスから取れるミルクは栄養価が高く、重宝されていました。

さて、ミルクを絞るわけですが、絞ってすぐに飲みきるわけではありません。

このミルクを移動のため、保存する必要があります。

そこで家畜(反芻動物)の胃を利用しました。

胃の形状的に保管用の袋としてはベストだったのかもしれません。

この胃で作った袋に保管していたところ、偶然にもミルクが固まり、固形分(チーズ)と液体部分の乳清(ホエー)に別れることを発見したのです。

そして固形分を固めたものに塩を入れたりしてより保存性を高め、保存性がよく、濃厚で、栄養価の高い現在でも食べられるチーズの形へと受け継がれているのです。

チーズに必要なレンネット

さて、胃の袋に入れていたということですが、恐らく全てが固まったわけではないと思います。

その理由はレンネットにあります。

レンネットとは

レンネットはチーズづくりに欠かせない凝乳酵素。凝乳という言葉のようにミルクを固める働きがある。具体的には、ミルクに含まれるカゼインタンパク質とカルシウムイオンの凝集を、レンネットが促進する作用をもつ

つまり、チーズづくりの初期段階である、凝乳に必要な酵素がレンネット、と呼ばれる酵素なのです。

レンネットが取れるのは限定的

このレンネットは反芻動物の胃で出る消化液に含まれます。

反芻動物といえば、いくつも胃を持っています。

しかし残念なことに、レンネットはすべての胃にあるわけではないのです。

レンネットがあるのは、授乳中の動物の第4胃だけです。

授乳中の反芻動物はこのレンネットの作用を利用して、親からのミルクの消化吸収を促します。

しかし、成長するとレンネットはほとんど無くなります。

この理由は草を食べるようになるころに、第4胃の消化液中には草を分解するためのペプシンと呼ばれるタンパク質分解酵素の量が消化液に増えます。

レンネットもタンパク質からなる酵素です。

つまり、ペプシンの作用によってレンネットが分解されてしまい、凝乳作用がなくなってしまうのです。

ミルクを飲まなくなる頃には、体もレンネットを作る必要が無いので、どんどん減っていきます。

そのため、大人になることにはレンネットを持っていないのです。

このようにチーズづくりには、子牛など反芻動物の授乳中の子どもの第4胃が必要なのです。

チーズを作るための犠牲

上記のようにチーズ作りに欠かせない酵素レンネットがとれるのは子牛、子羊、子ヤギなどだけです。

結果、チーズを作るために生まれてすぐの家畜を屠殺しました。

このレンネットをとるのは、酪農家にとって大変なことです。

これからの家畜は犬や猫のように、一度に大量の子どもをつくりません。

通常の場合、成長してミルク用にしたり、オスの場合はお肉として酪農家の生活を支えてくれる家畜です。

しかし、チーズを作るためには、レンネットを取る専用の子牛などを屠殺するしかなく、生まれてくる子の中では限られた数しか使うことができません。

また新しい命の誕生は嬉しいことですが、それを支える酪農家は楽ではありません。

結果、レンネットを安定的に確保することが出来ず、昔はチーズの安定供給が出来なかったのです。

チーズ安定供給のための技術革新

ここから、仔ウシレンネット(カーフレンネット)以外のレンネットへの発展を見ていきます。

植物レンネットと微生物レンネット

まず、他の生き物からレンネットと同じ凝乳作用をもつ成分の探索が行われました。

これには仔ウシの数の問題もありますが、ウシを食べることができないヒンドゥー教など宗教上の理由を解決するためでもあります。

植物レンネット

植物から見つかった凝乳作用を持つタンパク分解酵素がこれに当たります。

  • イチジクのフィシン
  • パパイヤのパパイン
  • パイナップルのブロメラィン

など

ヒンドゥー教などの宗教上の理由でインドなどでは、古くから研究が行われています。

これらの酵素を利用したチーズの風味は淡白であり、強い苦味が出る特徴があります。

微生物レンネット

微生物レンネットは、

  • リゾムコール・ミイハイ (Rhizomucormiehei)
  • リゾムコール・プシラス (Rhizomucorρusilus)

などカビががつくる”たんぱく質分解酵素”で凝乳活性を持っています。

こちらもまた苦味がでやすい欠点がありましたが、20年代に入り改良が進み,苦味の発現がより少ないものが出回るようになりました。

微生物レンネットは日本で発見されたこともあり、日本では最も主流のレンネットです。

植物・微生物レンネットは全レンネットの30%

一般社団法人 Jミルクが2017年に発行した「改訂版 牛乳・乳製品の知識」によると

現在、世界では発酵生産キモシンが約60% 、微生物性および植物性レンネットが約30%用いられています。日本では動物性レンネットと微生物性レンネットが多く使われています。

引用:改訂版 牛乳・乳製品の知識

日本では主流であっても植物レンネット、微生物レンネットは全てのレンネットの30%です。

ちなみに2007年のデータを見ると40%だったので、使用量の割合は減少しています。

またそれぞれのレンネットの説明でも書きましたが、植物レンネット、微生物レンネットは仔ウシレンネットを使用したチーズと比較して、より苦味が強いという欠点があるのです。

ちなみに仔ウシレンネットは全体の10%以下です。

発酵生産レンネットの誕生

そして1990年代に入り、遺伝子組み換え技術を用いた発酵生産レンネットが実用化されます。

仔ウシレンネットの成分の90%はキモシンと呼ばれるタンパク質です。

このキモシンというタンパク質こそ、凝乳活性に関わる主成分です。

そこで、ウシのキモシン合成に関わる遺伝子を組み込んだ微生物(大腸菌、酵母、カビなど)を作成し、キモシンを生産するようになったのです。

この結果、発酵生産レンネットととして大量、そして安定的に生産することができるようになりました

さらに発酵生産レンネットの成分は100%キモシンです。

純度が高いことで、凝乳作用以外のほか反応が起こらないため、苦味や雑味の少ない、マイルドなチーズを作れるようになりました。

現在ではその使用量が増えており、全世界のチーズ生産に使用されるレンネットのうち、半数以上の約60%がこの発酵生産レンネットが使用されています。

チーズの苦味をレンネットの面から考えると

発酵生産レンネット<仔ウシレンネット<植物レンネット、微生物レンネット

です。

最後に:読んでくれた方に考えてもらいたいこと

さて、チーズそしてレンネットの歴史を見てきました。

このように

「今一般的になっているから遺伝子組み換え食品(GM食品)がいいんだ!」

とは私は言いません。

しかし、発酵生産レンネットができたことで

  • レンネットのためだけに仔ウシを屠殺する必要がなくなった(酪農家のコストや手間が減った)
  • チーズが安定的に市場に出回るようになった
  • チーズの味がまろやかで食べやすくなった

これらは明確な事実です。

そしてこれらどれもが私たち人にとってはメリットです。

国内でもバルのブームやチーズタッカルビなど、チーズを大量に使うお店や料理も人気になっています。

そこで使われるチーズはどこから来るのでしょうか?

国内で作られるのは微生物レンネットが大半です。

しかし、国内のものだけで私たちは満足しているでしょうか?

していないからこそ、海外からの輸入も多いです。

つまり、知らないうちに遺伝子組み換え食品である発酵生産レンネットを使用したチーズを食べている可能性は大いにあります。

それで健康の被害が出ているのでしょうか?

「遺伝子組み換え食品をなんか嫌だ」と思うことは、別に変なことではないと思います。

だってよく分からなければ、怖いからです。

しかし、現実として周りに増えているし、気づかなところで使用されていることもあります。

このような状況を踏まえて、遺伝子組み換え食品について考えて欲しいです。

そして興味があれば、学んで欲しいと思います。