【考察】国内の平均賃金が上がらない根本的な理由

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日本経済は上向いていると言われているのに、私たちの賃金が全然上がりません。

そして2019年10月の消費税増税。

社会保険料も上がり、物価も上がっています。

しかし、賃金は上がりません。

さて、私は食品メーカーで働いています。

正直申し上げると、

食品メーカーの賃金は製造業の中で最も安いです。

食品メーカーは給与が低い!?製造業の中でも低賃金な理由

一応毎年昇給はありますが、

それ以上に増税、社会保険料の増加、物価上昇が方が大きいので、

全然上がった気がしませんね。

今回は、なぜ日本の賃金が上がらない理由を紹介します。

日本の現状について

企業の話をする前に、まず日本全体を確認します。

日本のGDP成長率

国内総生産(こくないそうせいさん、英:Gross Domestic Product、GDP)は、一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額のことである。

引用:wikipedia

2017年のGDP成長率は1.7%。

2012以降、成長率はプラスです。

つまり、国内全体では成長し続けているのです。

「1.7%は低いすぎる、高度経済成長期は・・・」

という声がありますが、当時と今では、あまりにも経済規模が違うので、

比較対象としては適していません。

なぜなら、

市場規模が大きくなるほど、成長率は低くなるからです。

つまり、発展中の国より先進国の方が必ず成長率は低いです。

簡単な例として、家庭の貯蓄で考えます。

前年より1年間で10%貯蓄を増やす場合、

  • 100万円から110万円に増やす
  • 1000万円から1100万円に増やす

どちらが難しいでしょうか。

このように同じ成長率10%でも規模の違いで、

難易度が格段に違ってきます。

そのため、

高度経済成長期・パブル期の経済成長率と比較するのは、

現在を見ていないといっても過言ではありません。

企業の売り上げ、利益は上昇

注意:個別の1社ではなく、平均の話です。

国内GDPが成長 = 企業全体の売り上げは上昇

ということです。

あくまで平均ですが、全体としては上がっています。

しかし売り上げが増加しても、それが利益にならなければ、意味がありません。

引用:日本企業の稼ぐ力は高まったのか(みずほ総合研究所)

そこで、経常利益率を見てみると、政権交代後の2013年からは

  • 大企業の利益率が大きく上昇
  • 中堅・中小企業の利益率が微増

ということが見てとれます。

高度経済成長期〜バブル崩壊後の平均利益率が3%以下のため、

企業の利益は大変多くなりました。

まだまだ欧米の利益率よりは低いですが、だいぶ改善しました。

法人税の推移

経常利益率が上がっても法人税が高ければ、企業の純利益は下がります。

そこで法人税率の推移を確認していきます。

引用:法人課税に関する基本的な資料(財務省)

バブル期以降、法人税率は下がっています。

つまり、企業は

  • 売り上げ増
  • 経常利益率増
  • 法人税率減
  • 純利益増

ということになっています。

ただし、企業の売り上げの増加によって、国の法人税収入も増加しています

企業の内部留保は年々増加している

引用:経済トレンド55

内部留保の推移をみると、明らかに上昇しています。

一旦ここで内部留保について、確認していきます。

内部留保(ないぶりゅうほ、英: retained earnings)とは、企業の所有する資産のうち、借入金や株主の出資ではなく、自己の利益によって調達した部分をさす。たんに企業の資産の調達方法を意味する言葉であるから、内部留保が豊かであるからと言って、『使い道のない資金を溜め込んでいる』というわけではないことに留意すべきである。むしろ通常はオフィスや生産設備として現に有効活用されているものである。

引用:wikipedia

黄色の部分が非常に重要な点です。

よく勘違いされることですが、

内部留保 ≠ 資金を溜め込んでいる

です。

今回はデータを載せていませんが、

企業の預貯金率はほぼ変化がなく、M&Aや経済ショックに備える額も変わっていません。

余談ですが、この点は本当に勘違いしている方も多くおり、

2007年の米国金融危機(世界金融危機)とそれに伴う世界経済の急激な後退に際して、

日本の大企業は非正規労働者の大規模な解雇・契約解除で対応した際、

日本共産党の志位和夫委員長は、「自動車産業は2万人近い人員削減を進めているが、業界の内部留保の0.2%を取り崩しただけで、雇用は維持できる」と訴えている。

という言葉を残しています。

確かに非正規労働者の大規模解雇は問題です。

しかし、内部留保は生産設備も含まれており、

製造業である自動車産業の内部留保には工場設備が大部分を占めていることが考えられます。

内部留保の0.2%を取り崩すということは、

工場設備の一部を売却することであり、それこそ雇用を減らす原因になります。

では設備投資が進んでいるのでしょうか

企業の設備投資費はあまり変化がない

引用:日本政策投資銀行資料

では、実際内部留保にも入る設備への投資はどうなっているのか?

実はここ数年大きな変化はありません。

上記の設備投資費はオフィスや生産拠点などのため、

ソフトウェアへの投資、M&A、研究開発費、人材教育費は含まれていません。

なお、企業以外の国の研究施設も、国内研究開発費はほぼ変化なく、

GDPが上昇しているため、GDP対比の研究開発費率は減少しています。

国内のM&Aが活発になっているわけでもないので、

ソフトウェアや人材教育に使われているのでしょうか?

企業内での活動の変化

今までマクロ視点で見てきたので、次はミクロで現状を確認します。

年功制が色濃く残る

以前に比べると、成果主義が増えました。

しかし!

依然として年功制が大部分です。

成果主義を採用している企業も、

実は年功給が大きなウエイトで、

それにプラスして成果(評価)査定で賃金が決まるところが多く、

本質的な部分は変わっていません。

年功制は、経験が生産性に貢献する職種では有効です。

いわゆる職人のような仕事です。

経験を積み重ねることで、スピードも品質も上がり、

生産力の向上と給与の上昇が対等になっている、というわけです。

しかし、現在の仕事は経験では補いきれない部分が多いです。

年功制には次の3つの問題点があります。

  • 業務の価値が不明確
  • 評価制度が曖昧になり、能力が高い人、生産性が高い人ほど損
  • 時間で給与が決まり、労働者が残業する

単純労働がへり、複数の頭脳労働が増加

上記の問題点の「業務価値が不明確」の点です。

コンビニのバイトを紹介します。

昔であれば、アルバイトの仕事は

  • 品出し(商品管理)
  • レジ打ち
  • ホットスナック(おでん)
  • 店内清掃

でも今のアルバイトは

  • 品出し(商品管理)
  • レジ打ち(支払い方法増加)
  • ホットスナック(増加)
  • 店内清掃
  • コーヒーメーカーの管理
  • 光熱費をはじめとした支払い対応
  • 郵送の対応
  • (商品の仕入れ発注業務)

上記の例はあくまでも一般的な業務内容です。

コンビニによっても差がありますが、業務は確実に増えています。

しかし、コンビニといえば、最低賃金に近い時給です。

私も大学時代、地方のコンビニで時給700円弱で働いていました。

最低賃金が上がり、都心では時給1000円を超えます。

しかし、仕事の内容の増加が大きいので、

今コンビニのバイトをやりたいかと聞かれれば、迷います。

本来、一人でできる業務内容が増えることは、その従業員の価値向上を意味します。

つまり価値が上がるなら、賃金を上げるのが筋です。

この流れはバイトだけでなく正社員も同じです。

単純労働は機械化で人を必要とせず、代わりに頭脳労働の仕事が増えました。

もちろん、頭脳労働は単純労働よりも高い価値を生み出します。

しかし、これが賃金に反映されていません。

評価制度が曖昧なまま

さらに年功制の問題点は、評価制度が曖昧という点です。

年功制は経験=生産力、という考えで成り立つ評価制度。

そのため、能力が高い人も、低い人も、一律に評価されます(実際には軽微な差はあり)。

つまり、同期間で差が小さく、上下関係で差が大きくなります。

ここには欠落している視点があります。

それは

  • 業務の内容・価値
  • 生産力

年功制とは個人の成果を見ていない以前に

業務の価値が考慮されないことに問題があります。

仕事の価値も、個人の評価も曖昧なのです。

例えば、ある製品を1日で平均10個つくる仕事があったとします。

年功制では同期の中で、8個しか作れない人も、12個つくることができる人も同じです。

さらに言えば、12個作れる新人よりも、

8個しか作れない経験の長い社員のほうが評価されます。

仕事の価値や人の価値を考慮しない、できないため、

働く時間で賃金を決めるのです。

ゆえに労働者から見れば「残業した方が給与が上がる」ため

労働生産性が低い方がメリットが大きくなります。

企業と労働者が対等ではない

企業(雇用者)と労働者(契約者)は本来対等な間柄です。

契約の法律を見ると、

契約は、 二人以上の当事者の意思表示が合致することによって成立する法律行為のこと。
(別の言い方をすると)合意のうち、法的な拘束力を持つことを期待して行われるもののことで、特に雇用・売買・所有 等々に関して行われるもの。

引用:wikipedia

雇用を考えた場合、

  • 企業:賃金を支給する
  • 労働者:労働力を企業に提供する

この2つが相互の同意のもとに、雇用契約が結ばれることで、

雇用が成り立っています。

で、

雇用契約の見直しの際、同意ってありましたっけ?

労働組合がある企業では労働組合が代表して争議を行なっています。

しかし、労働組合がない企業の見直しの話はあまり聞きません。

要するに、

企業は一度雇用すれば、業務内容や賃金を自由に変えることができる

企業が上で、労働者が下という構図になっています。

つまり企業の経営者が判断しない限り、

仕事量が増えたり、仕事内容が高度になっても、

賃金に反映されない原因の一つです。

解雇が少ない

大企業のリストラ以外、解雇の話ってニュース等ではあまり聞きません。

もし、企業と労働者が対等の間柄だった場合、

賃金に見合った労働力を提供されなければ、

企業は労働者の賃金を下げたり、解雇することは問題ありません。

それは雇用契約を労働者が破ったからです。

過去の大阪市で公務員が解雇されるニュースも話題になりました。

「能力不足」理由に職員2人を分限免職 大阪市人事評価 橋下氏肝いり職員基本条例“初適用”

研修等も行ったにも関わらず、改善が見られなかったため、解雇です。

条例を抜きにしても、労働契約的には大した問題になりません。

が、問題視するのは

「雇用が守られて当たり前という意識が私たち労働者に存在する」

ということです。

そして雇用主である企業も、ほぼ解雇しない。

結果、窓際という仕事をしない社員ができます。

仕事をしない社員の賃金を下げてもいいのですが、

それをすると社内でも社外からも批判を受けるリスクがあります。

結果、企業は労働生産性を無視した年功制を続けているのかもしれません。

もちろん変えた方がメリットがありますが、

変えないで今に甘んじている方がいいと考えているのでしょう。

日本国内の賃金が上がらない根本的な原因

今までの話を踏まえつつ、賃金が上がらない根本的な原因をまとめています

業務の価値が考えていない

第一の問題は、業務の価値と賃金が関連付かない、ことです。

1日にち1つの仕事をする人も、3つの仕事をできる人も同じ賃金です。

一律にした結果、

  • 能力ある人のやる気は下がりやすく
  • 能力が低い人は改善する努力を怠る

ことを助長します。

結果、生産性は低くなるわけです。

評価基準が曖昧で、評価者によって大きく変わる

業務の価値を考えていない結果、評価方法が管理職個人に依存します。

つまり、仕事の良し悪し以外の要素、

評価者の好みなど、

より曖昧で不確定な要素で評価されてしまいます。

結果、

会社への不信感やモチベーションの低下を引き起こし、

生産性が低くなります。

年功制というブラック企業を生み出しやすい給与体系

年功制は

  • 仕事の価値
  • 労働者の価値
  • 生産性

を完全に無視できる制度です。

このため、

企業は「成果物をどんどん生み出すことを重視し」

労働者も「効率がよくても、賃金が下がるなら、長時間労働もしょうがない」

というブラック企業を生み出す環境や感情を生み出します。

「人を大切にする」会社という労働者満足度の低い企業

企業のPRで「人を大切にする」という言葉をよく見かけます。

ただし、そういう企業の労働者満足度は低い、ことが多い。

だって、人が大切なのに

  • 低賃金
  • 少ない福利厚生
  • 不明確な評価
  • 長時間労働
  • 少ない研修

なんてことはありません。

大切にしていたら、社員を使い捨てにはできなません。

最近は「やりがいのある仕事」なんて言葉もありますが、

やりがいは「労働者が感じるもの」であって、雇用者が与えられるものではありません。

このような会社は経営者の感情や考えの押し付けの可能性が高く、

ブラックになりやすい傾向にあります。

現在の経営者の多くはバブル崩壊後にのし上がってきた

バブル崩壊後、経営を改善するために多くの企業が行ったことは

  • 新卒求人を減らす
  • リストラ
  • 賃金の上昇率を抑える
  • 非正規雇用の増加

などである。

このようなことが起こると、一般の人たちの多くは

「財布の紐をしっかり締め、生活を切り詰める」ようになります。

すると企業は製品が売るために、「製品の価格を下げる」を下げます。

結果、お金の流れが悪くなり、経済成長が落ち込みました。

でも1番の問題はそのような失われた20〜30年間の間にのし上がってきた人たちが

現在、経営者として企業のトップにいることが多いということです。

つまり、「賃金を上げて労働生産性を高めよう」という考えができる経営者は多くないのではないかと思います(特に1つの会社でのし上がってきた人)。

それこそ、そのようなやり方で

売り上げ・利益が上がるという経験がないからです。

雇用される側の意識の問題

雇用主だけでなく、私たち雇用される側の意識にも問題があります。

それは

  • 企業が養ってくれるという考え
  • 安定志向
  • 学習的無気力感(頑張っても変わらないなら今の状況を選んでしまう)

などです。

これらは雇用主が賃金を上げなくてもすむ、理由になります。

雇用主の方が絶対的に上位になり、不平や不満も雇用主には届かないため、

この状態で満足してしまいます。

賃金を上昇させるために必要なこと

バブル期と比べて、一般社員の仕事の内容は変わりました。

いわゆる事務方も、システムを活用し、少人数で回さなくてはいけません。

仕事内容は変わって、仕事量が増えても賃金はあまり上がってません。

  • はっきり言って、
  • 利益が上がっている
  • 法人税も下がっている
  • さらに人手不足になっている

状況で従業員の賃金や新人への給与体系を変えられないのは、

1番に経営側に大きな問題があります。

しかし上がらないのはなぜか?

それは上記にも書いた通り、私たち一般社員側にも問題があります。

その点で、解決する方法を考え、

国がこんな制度を作れば、より良いというのをまとめてみました。

雇われる方の意識を変えること

上記にも書きましたが、本来

雇用する会社と雇用される労働者は対等です

しかし、現状多くの労働者は対等という意識をもつ人はまだ少ない。

多くの人は

  • 安定した会社に入れば、安心だ
  • 長く働けば給与があがる
  • 給与をもらっているから会社のために一生懸命がんばる

などなど

会社を持ち上げ、それによって会社の価値を大きく感じ、それに頼ってしまっているのだと思います。

それでは本来の対等の立場ではありません。

自ら価値を下げているからです。

これこそ、人的価値を下げる原因です。

私たち自身が対等という認識をもち、

能力に見合った賃金をもらうべきである、という認識に変えていく必要があります。

今は売り手市場!

賃金が安く評価されないのであれば、

対等な立場として賃金の交渉やより能力を評価し、

賃金をだしてくれる企業に移る、移ってもいい、と考えていいのです。

人材の流動性を上げること

上記のように、考えた場合、

今後、転職や起業など活発になることが予想されます。

結果、人材の流動性が上がります。

人材の流動性が上がった場合、企業は能力ある社員を取るため、そして流出しないために、

  • 賃金
  • 福利厚生(家賃補助など)
  • 会社環境(立地や設備)
  • 研修制度

を改善し、会社に人材を留めておこうとします。

結果、賃金は間違いなく上昇します。

人材の流動性は、デメリットもあります。

それは人材競争が激化するということです。

具体的には

会社が求める能力に足りない場合、減給・解雇が起こりやすくなるわけです。

つまりチャンスがある分、その競争から落ちることもあります。

政府は「労働者の権利の確立」と「転職支援」を

そこで行政が行って欲しいことは次の2点。

  • 労働者の権利の確率
  • 転職支援(職業訓練)

労働者の権利は、転職が当たり前になっても

解雇や急激な減給をさせないために、

そのための条件を明確にすることです。

もちろん、雇用契約の見直しも必須項目です。

不用意に人材を使い捨てするようなことは見逃してはいけません。

そして転職支援。

人材の競争が激しくなった場合に、救済措置は必要です。

具体的には

  • 一定期間の転職活動の支援
  • 職業訓練の拡充

つまり、私たち労働者がほかの道を選んだ際に、それを支援して欲しいのです。

無職期間は国にとっても所得税が減るなど、デメリットがあります。

ならそこを支援することで、政府にとっても、一般労働者にとってもより良い状態を作ることにつながります。

最後に

私は経済のことを勉強して、ほんとうに日本の賃金の上がらなさは異常だと感じました。

平成の時代を「失われた30年」という人もいますが、

「捨てた30年」だと思います。

過去から続く、労働制度を変えず、

会社も労働者も両方の首を締め合い続けてきました。

結果、賃金が上がらず、お金が回らないため、

日本の経済成長が小さくなりました。

日本全体に関わる大きな内容ですが、私たち個人でできることもあります。

それこそ、自分の価値をしっかり考え、会社と対等な関係を構築することです。