【考察】新型感染症で学校給食がないのに、牛乳の値段が変わらなかったわけ

スポンサーリンク

新型の感染症影響で、学校が休校になりました。

すると、学校給食に関わる食材も影響が出ます。

特に急に休校が決まった3月は様々なニュースでどう消費するのか、話題になりました。

中でも、今回は牛乳の話です。

「牛乳を消費して、酪農家を助けましょう」

という声が広がりました。

けど、牛乳が余る割には、牛乳の値段が変わりませんでした。

※筆者の住む地域では、牛乳や乳製品の値段はほとんど変わりませんでした。

本来需要に対して供給量が増えると値段が下がります。

(ここでは一般家庭用の牛乳が増えたという意味合いです。)

しかし、そうならなかったのに疑問を感じ、

今回まとめ、どうなっているのか考察しました。

※あくまでも筆者の考察です。

生乳の値段の決め方

まず、通常の生乳から飲用牛乳・乳製品になるまでの一般的な流れを確認します。

生乳の流れ

一般的に、酪農家が牛からとった生乳を直接メーカーに販売するのではなく、

農協などの指定団体に集められ、それを乳業メーカーに販売します。

これを「一元集荷 多元販売」と言います。

ちなみに酪農家が直接乳業メーカーと取引することもできますが、

国からの酪農補助政策等の援助が受けられなくなるため、

ほとんどの酪農家は指定団体に加入しています。

生乳の値段を決めるところ

上記のような流れのため、価格交渉は指定団体と乳業メーカーが行います。

一元集荷しているため、団体が乳業メーカーと交渉するのが合理的です。

この価格交渉によって、1年間の生乳1kgあたりの値段が決定します。

これを「乳価」と言います。

この乳価に基づいて、酪農家からの生乳の量に応じて、

団体から酪農家に支払われることになります。

用途別取引

乳価が決まりますが、実は用途によってその乳価が異なります。

具体的には

飲料用の牛乳にするための生乳の乳価と

チーズやバターなどの乳製品に加工するための生乳の乳価が

違います。

乳価としては、飲用>加工用です。

安定的な生産と価格設定のため

このような生乳の流れと価格設定は、かなり合理的だと思います。

  • 団体が交渉することで、酪農家は生産に集中できる
  • 生産した生乳量に応じて収入が決まるので、わかりやすい
  • 消費量に関わらず、酪農家は収入が得られる。
  • 乳業メーカーは交渉する数が減る
  • 乳業メーカーは大量の牛乳を確保しやすくなる

通常時を考えると、効率化、酪農家を守る、という点ではしっかりした仕組みだと思います。

その反面、酪農家ごとにブランド力を発揮することが難しい仕組みです。

例えば、酪農家がオリジナルヨーグルトの製造販売したいとき、

生乳を団体に収めているため、一度団体から買い戻す必要があります。

牛乳・乳製品の価格が変えられない理由

さて、ここからが本題です。

冒頭のように、学校給食用の牛乳が余っても、市販される牛乳・乳製品の値段はそこまで変わりませんでした。

その理由について考えてみます。

飲用乳・加工乳の消費の低下

休校により、学校給食用の牛乳が余ったことはかなりニュースになりました。

しかし、実はそれだけではありません。

外出の自粛により、業務用の牛乳や加工乳の消費が低下しました。

具体的には、お菓子やデザートに使われる乳製品、

それから外食で使われるバターやチーズの消費量が減ったのです。

考えてみてください。

もし新型感染症がなければ、ゴールデンウィークに旅行したことでしょう。

旅行先で、ソフトクリームを食べたり、お土産にお菓子を買うでしょう。

それらにはもちろん、乳製品が使われています。

つまり、牛乳ばかりがピックアップされていましたが、

実際には乳製品全体の消費が落ち込みました。

生乳の生産量は変えられない

乳製品全体の消費が落ち込んでも、生乳の生産量は変えることができません。

毎日、酪農家は牛の乳を絞って生乳を取り出しています。

生き物相手ですから、それを止めることはできません。

なら、絞らなきゃいいのでは?

と考える人もいるかもしれませんが、

乳牛は乳を絞らないと、乳房炎という病気になり、

最悪、死んでしまいます。

つまり、生産量を減らすには、乳牛の数を減らすしかありません。

でも乳牛を減らすということは酪農家の収入を減らすことに直結してしまいます。

また、この感染症が収束すれば、また以前と同等の量の生乳が必要になります。

すると今度は生乳が足りない事態を引き起こすでしょう。

これらのリスクがあるため、今は生産量を維持するしかありません。

加工設備のキャパ・供給量のバランスが崩れる

なら、チーズやバターなどの乳製品に加工すれば、いいのではないか?

という疑問が湧きます。

しかし、チーズやバターを大量に作るには大型の機器と労力がかかります。

多少、乳製品への加工する量を増やすことはできるとは思いますが、

設備にも限りがあるため、大量に加工用に回すことも出来ないと思います

また、いろんな業界が自粛しているため、

乳業メーカーも大々的な設備投資が難しく、

もし設備を導入しても、収束後に不必要な設備を抱えるリスクになります。

さらに、乳製品全体の消費量が減っているため、

おそらく乳業メーカーは在庫が積み上がっている状態です。

いくら加工して牛乳より賞味期限が伸びたとしても、

永遠に保管できるわけではありませんので、

現状でも在庫をどうしていくかが、メーカーの課題になっているかもしれません。

飲用乳が減り、加工乳に回るだけで酪農家にダメージ

乳価のところで解説しましたが、

飲用乳よりも加工用乳の方が乳価が低くなります。

つまり、飲用から加工用に変えるだけでも、酪農家の収入が減ります。

酪農は牛乳を搾るための設備だけでなく、牛の毎日の餌代もかかります。

つまり、収入が減り続ければ、酪農自体をやっていけなくなってしまいます。

価格を維持するか、乳製品の価格を上げるしか方法がない

では今の状況で酪農家を守るためには

私は2つの方法があると思います。

それは

  • 価格を維持して、牛乳の消費を促すこと
  • 加工用乳の乳価を上げること

加工用乳の乳価をあげた場合、酪農家を守ることはできるかもしれませんが、

乳製品自体の価格が上がるため、家庭用の消費が落ち込む危険性があり、

今回の牛乳が余っている状況を打破することはできません。

すると、現状の牛乳の値段を維持して、

家庭用の牛乳の消費を増やしていくのが乳業業界全体にとっても良い状況となります。

まとめ

ここまでの話を総括します。

まず酪農家、乳業メーカーを取り巻く仕組み

  • 団体が一括で価格交渉し、年間の価格を決定する
  • 乳価は加工用より飲用の方が高い

新型感染症によって

  • 休校・自粛により牛乳だけでなく乳製品全体の消費が落ち込んでいる
  • 余ったぶんを全て加工に回すことも難しい
  • 価格を維持して、牛乳の消費を促すのが、酪農家だけでなく業界全体にメリットがある

以上のことが、

学校給食用の牛乳が余っても、牛乳の価格があまり変わらない理由だと考察します。

また、牛乳を飲んで酪農家を応援しないと、

今まで通りの生乳の供給ができなくなり、

今後牛乳や乳製品の価格が上昇することもつながります。

つまり、牛乳を飲むことが酪農家を守るだけでなく、

今後の乳製品の価格の上昇を抑えることにもつながると思います。