【解説】新型感染症の検査に使われたPCRと日本の検査数が一気に増加できなかった理由

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【解説】新型コロナウイルスで日本のPCR検査数が少ないのに、死亡者数が少なかった理由
新型コロナウイルスは、世界各国で、ロックダウンや経済ストップなど 大きな被害を出しています。 その中で日...

新型コロナウイルスによる世界的な混乱の中、日本はPCR検査が諸外国と比較して少ないにも関わらず、死亡者数がとても小さい結果となりました。

前回の記事は、CTによって肺炎を引き起こす重病者に医療資源を投入することができたことが死亡者数の増加を抑えることに効果があったことを解説しました。

しかし、問題は、なぜ検査自体が増えなかったのか。

今回は、

  • この問題についてPCR検査方法
  • 検査が増えなかった原因
  • 大量の検査が正解ではない可能性

この3点について解説します。

感染を検査するPCR検査

メディアでもPCR、PCR検査と言われていますが、

正確には逆転写PCR法(RT-PCR)という検査方法になります。

新型コロナウイルスの遺伝子はRNAです。

対して我々、人や動植物、多くのウイルスの遺伝子はDNAという物質です。

そして、PCRはDNAに対して、行う方法です。

RT-PCRとは

新型コロナウイルスの遺伝子はRNAという物質です。

そのため、そのままPCRを行うことができません。

そこでRNAからDNAに変換する逆転写(reverse transcription)を行い、

変換したDNAをPCRで増幅して、検出するという方法をとります。

ちなみになぜ、「逆」かというと、

通常の遺伝子発現はDNAからRNAになり、その情報からタンパク質という流れです。

このDNAからRNAになる過程を「転写」と言います。

つまり、逆転写はこれとは逆のルートだから、逆転写なのです。

この検査方法は難しいのか

RT-PCR法を使った検査の流れは次の通りです。

  1. 検査サンプルを採取する(口の粘膜を採取)
  2. 検査サンプルからRNAを抽出する
  3. コロナウイルスのRNAをDNAに逆転写する
  4. 逆転写してできたDNAをPCRで増幅する
  5. 増幅されたDNAを検出する

大きな流れとしては、試薬や必要な機器があれば、誰でもやろうと思えば、できます。

誰でもやろうと思えば、できますが、難しいのがサンプルの管理と正確性です。

まず、採取したサンプルの管理が悪いと、

検査がうまくいかず感染してるけど、検出できない偽陰性を引き起こします。

また、ウイルスが他のサンプルに混入すれば、偽陽性を出します。

さらに、RNAは比較的不安定な物質なので、管理が甘いと壊れてなくなり、偽陰性の原因になります。

逆転写・PCRでも試薬の量が少し違ったり、入ってなかったり、他のものが混入したりすれば、偽陰性・偽陽性を簡単に起こすことができます。

つまり、検査自体は検査に関する知識と修練があればいずれできるようになりますが

検査自体がかなり集中力を要し、かつ高い技能が必要のため、

すぐに人材を増やすことが難しいです。

必要なのは検査技師の技能と試薬や機器

上記のように検査技師には集中力とそれなりの経験が必要になります。

しかし、RT-PCRは保健所や大病院を除いて、

一般的に広くある検査機器ではありません。

CTよりも少なかったはずです。

そのため、熟練した検査技師が足りません。

また、新型コロナウイルスは世界的パンデミックに広がり、

世界各国でPCR検査が行われるようになりました。

結果、PCR検査に必要な試薬や検査に必要な機器等の需要が高まり、

世界的に不足気味になりました。

私自身は医療現場で働いている訳ではないですが、

PCR検査にこれらの試薬や資材が優先的に使われているため

研究用の試薬・資材にも不足が出ていることを身にしめて感じます。

検査が増えなかった原因

この記事を書いている2020年5月末には政府の目標である1日2万件の検査が可能な体制まで整っています。

しかし、その目標を掲げてからも、PCR検査がなかなか広がらないことが話題になりました。

ここからは、その根本的な原因について4つ解説します。

検査面では熟練した検査技師が足りない

第1に上記でも書いたように知識と経験のある検査技師が足りない、ということです。

知識や経験の足りない人に検査をやってもらうこともできますが、

偽陰性・偽陽性を増やす原因になります。

また、検査技師も人です。

集中力を要する検査をぶっ続けで休みなく、検査するのは無理です。

つまり、休憩や休息を取らせ、

高い集中力を維持するためには、急激に検査数を増やすことは難しいのです。

検査を自動化する機器はありますが、

全国的に自粛が進んでいる中で、

高額で、しかも精密な機器を問題なく設置し、検査に使えるまでにも

それなりに時間がかかることも急激に検査を増やせなかった原因です。

世界的に検査が拡大し、試薬などが不足

こちらも上記に書いた通り、

世界的にPCR検査が行われるようになったことで、

検査に必要な試薬や資材が不足しています。

特に日本の場合は、多くを海外からの輸入に頼っているため、

その試薬や資材の供給量をコントロールするのも難しくなります。

防護服などサンプルを採取するために必要なものが不足

検査の第一段階として、検査対象から口の中の粘液などサンプルを採取する必要があります。

他の国では、ドライブスルー検査という名前で、数多くの検査を行いました。

それを見て、多くのメディアが「PCR検査」を増やせ、と言っていましたが、

大量に検査サンプルをとる際には、サンプルやウイルスが混じらないようにしなくてはいけません。

そのために検査のサンプルを採取する人は

検査する人ごとに防護服や手袋、マスクを変える必要がある

ということです。

つまり、人の数だけで、そういった資材が本来必要になります。

この理由は

  • 検査する人に付着したウイルスが他のサンプルに混入し、偽陽性になるのを防ぐため
  • 付着したウイルスが次に検査対象に移り、感染拡大につながるのを防ぐため

です。

他の国がどのようにやったかわかりませんが、

防護服や手袋、マスクが少ない中で、大量の検査を行うと、

その検査が原因で感染拡大を引き起こす可能性があります。

検査が行政検査のため

そして今回のPCR検査が行政検査というのも1つの理由です。

行政検査とは、行政が検査を管理するやり方です。

流れとしては

  1. 保健所で検査してサンプルを採取
  2. サンプルを地方衛生研究所に送って検査
  3. 陽性だったら、指定医療機関に入院

つまり、とても「時間がかかります

大きな病院で設備や人が揃っていたらPCR検査を増やすことも可能でしたし、

実際、やりますと手をあげた病院もありますが、

この仕組みでは急激に増やすことは難しかったはずです。

大量の検査が必ずしも正解ではない可能性

今までPCR検査と検査数が増えなかった理由について解説しました。

しかし、私はPCR検査をすれば良いというものではないと思っています。

実際、検査数が多い国ほど、感染拡大し、多くの死亡者を出しています。

ここからは「必ずしも検査拡大が有効ではない」について4つ理由の解説します。

偽陽性と偽陰性

まず検査で危険なのは偽陽性と偽陰性です。

  • 偽陽性:本来、感染していないのに、陽性と診断される場合
  • 偽陰性:感染しているのに、陽性反応がなかった場合

偽陰性から説明します。

今回のPCR検査は非常に感度の高い検査方法ですが、時に失敗します。

RT-PCRの説明の流れの中で、試験中のどこかのタイミングがうまくいかないだけで、

簡単に偽陰性になります。

PCR自体は大学の学生実験でも行われるますが、

取り扱いが悪いと簡単に失敗して、DNAを増幅できません

熟練の検査技師が行うことで、偽陰性を減らすことは可能ですが、

完全に0にすることはできません。

偽陽性は逆に

サンプルの管理が甘く混入してしまったり、

サンプルを採取する際に、たまたま混入してしまったり

が原因として考えられます。

PCR検査は感度が高いので、偶然入り込んでしまっただけで陽性になります。

偽陽性は本来隔離する必要がない人を隔離し、医療現場を圧迫するだけでなく、

感染者を隔離した施設で実際に感染してしまうことがあります。

偽陽性は本来隔離される人が普通にであることにつながるため、

市中での感染拡大の原因になります。

検査機関に押し寄せて感染拡大

誰でもすぐに検査を行いますという状況になると、

検査を行う医療機関に人が押し寄せることが想定されます。

人が押し寄せ、その場が「密」になると、そこで感染拡大が起こります。

実際、お隣韓国ではSARSの際、

検査機関に人が押し寄せ、そこで感染が拡大した歴史があります。

(これを避けるために、ドライブスルー方式が始まりました)

パンデミックが起きると、

感染していても、感染していなくても、

自分が今感染しているのか知りたいと思うものです。

必ず、そのような行動心理が働きます。

日本でも、一度電話してから、検査する医療機関を紹介されるという仕組みも

検査できる医療機関を公表しないことも

その医療機関に人が押し寄せるのを防ぐためです。

つまり、検査が必要だとしても、そこに人を集まらせてはいけないのです。

必要な物資が十分にないと難しい

また検査だけでなく、検査する人が身に着ける

防護服や手袋、マスクも十分な量がないといけません。

そうしないと、偽陰性・偽陽性を増やすことにつながります。

検査は感染を把握するものだが、安心を得るためのものではない

そして検査は感染しているか否かを知るために必要な方法です。

しかし、私たちが安心を得るためのものではない

ということをしっかり認識して欲しいです。

もしそれが偽陰性で安心してしまって、出歩くことで感染を広げることは容易に想像できます。

だって、ニュースを見ても、陽性で外に出た人がそれなりの数、いました。

なら、陰性となれば、外に出る人は増えるでしょう。

さらに言えば、検査はあくまでも、検査したときの状態しかわかりません。

つまり、検査が終わった後で感染する可能性もあるということです。

このように検査はまず完璧ではないこと、

そして検査を過信しすぎず、しっかり個人でできる対策は行う必要があるということです。

最後に

新型コロナウイルスでは、メディアが「検査!検査!検査!」と騒いでいましたが、

実際、そこまで日本国内での感染が広がらなかったので、

必ずしも検査すればいいという訳ではないと、感じます。

また検査して陽性が出ても、治療法はありません。

病院で行われている治療は肺炎や発熱など、症状が重い場合に、

その症状を抑えるための治療しかすることができず、

新型コロナウイルス感染自体をどうにかすることはできません。

もちろん検査やその治療法は大事ですが、

それに頼るのではなく、私たち個人が行うことができる

  • マスクの着用
  • 手洗い・うがい
  • 人混みを避けるなど

の対策を行うことが最も感染拡大を抑える方法なのではないでしょうか