【解説】日本では、シカの増加が自然破壊につながるのを知っていますか

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都内に出たシカが殺処分される可能性が高い理由について説明しました。

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今回は日本におけるシカの現状について解説します。

環境保全という意味でシカなどの野生動物が山や森に増えることはいいことです。

しかし、現状シカやイノシシといった一部の野生動物が増えすぎてしまっています。

すると自然環境のバランスが崩れてしまいます。

今回は、環境を守るという視点で、シカが増えすぎてはいけない理由について解説します。

シカが増えた理由

国内のシカはニホンジカ、ヤクシカ、エゾシカと数種いますが、今回の話は全てをまとめた話となります。

つまり、シカが確認されていない茨城県を除き、ほぼ全ての地域に当てはまる内容です。

1970年まで、国内のシカは減少した

1970年代までは国内のシカの頭数は減少、というか激減しました。

明治時代以降、戦後の食糧難を生き抜くことや稼ぎを増やす理由などで、乱獲されました。

シカは食料としてだけでなく、皮や角まで使い道がたくさんあります。

昔の豪邸にはシカの頭部が飾ってあったこともあり、

お金や力の象徴として使われていたのかもしれません。

この減少した期間に、

  • 「狩猟法」の制定
  • メスジカの狩猟禁止

など、国として対策を講じてきました。

増やすために狩猟を制限した

その後も各地で1日の狩猟頭数の制限や、捕獲の禁止措置を行うことで、

1980年以降、野生のシカの頭数は増加に転じました。

増加は喜ばしいことですが、後述するように、増加によって今度は自然破壊に繋がります。

シカの頭数が増加した理由は

  • シカはもともと繁殖力が強い(メスの狩猟を制限したことで増加しやすくなった)
  • 温暖化の影響
  • 狩猟者の減少
  • シカの天敵となる動物がいない

シカはもともと繁殖力の高い動物です。そのため特にメスの狩猟を制限したことで、繁殖に成功しました。

また、気温の変動による影響もあります。

一番は積雪が少なくなったことで、年中食料となる草をシカが食べれるようになったことで、繁殖に十分な体力をつける事ができるようになりました。

さらに狩猟の制限だけでなく、現在にも続く問題として狩猟者(つまりハンター)の高齢化によって狩猟者の人数が減っているのです。

このような理由が重なり、数が増えていきました。

日本にはシカの天敵がいない

そして1番の理由は日本にはシカの天敵がいないことです。

シカの天敵となる動物はオオカミや野犬です。

しかし、

本州以南に生息したニホンオオカミ、

北海道に生息したエゾオオカミ

共に20世紀初頭には絶滅したと言われています。

絶滅の理由は、家畜を襲うこと、毛皮のための乱獲、そして狂犬病です。

また、1950年に制定された狂犬病予防法による狂犬病対策の結果、

野犬もいなくなりました。

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あと、シカを食べる日本にいる動物はクマです。

クマは肉食で凶暴というイメージがあるかもしれませんが、

クマは基本的には果物や草を食べる草食系です。

シカも食べる事はありますが、単独でシカを捕まえる事が非常に珍しく、

怪我したシカや人の仕掛けた罠にかかったシカを食べる事があるようです。

そのため、シカの頭数を制限できるほど、クマはシカを襲いません。

以上のことから、日本においてシカの天敵となる野生動物はいません

シカが増えると起こること

シカは山の草を食べる

皆さんもご存知の通り、シカは低地に生える草を食べます。

ではシカが増えた場合、エサとなる草を求めて、

行動範囲が広がります。

このがその結果です。

環境庁資料より抜粋

上の写真は、南アルプルにおける高山植物の例です。

過去には、その高山に特有の花が咲き乱れていたところもシカにより、

食べすぎられてしまい、岩肌が見えるほどになってしまいました。

この1番の原因はシカが食べたこと。

そして温暖化により積雪が減ったことで、シカが草を食べる期間が伸びた事が原因です。

草がなくなると、樹皮を食べる

では、もし食べるための草がなくなったシカは、

今度は木の樹皮を剥がして食べるようになります。

登山する人の中には、このような気を見た事がある人もいるのではないでしょうか。

樹皮は柔らかい木の内部に虫が入ったり、動物に齧られたりするのを防ぐ役割があります。

しかし、樹皮を酷く失った樹木は害虫などに弱く、

内部に侵入される事で、中が腐食していきます。

シカが食べる高さは地上から2m以下の位置です。

つまり、支えるべき部分が崩れる事で、木の成長が止まり、

最悪、倒木してしまいます。

これがひどくなると、森の木々が成長できず、

森林が破壊され、無くなってしまいます。

森がなくなると、他の動物がいなくなる

森がなくなると、森を住処にしていた小動物がいなくなります。

だって、食べ物がないからです。

リスやフクロウ、ネズミ、キツネ、タヌキ、フクロウや小鳥もです。

それだけではありません。

草木がなくなる事で、土壌の環境が悪化します。

すると、ミミズやアリ、そのた昆虫なども数を減らしてしまいます。

生態系が崩れ、環境が崩壊する

結果、本来森に存在した生態系が崩れてしまいます。

また草木は水や土壌を保つ役割があります。

それらがなくなる事で、川が氾濫しやく、土砂崩れも起きやすい、

危険で、しかも不毛な土地になってしまうのです。

1990年以前のアメリカのイエローストーン国立公園は

まさにシカによる森林破壊が起き、生態系が崩れてしまいました。

イエローストーンが回復した話はこちらをご覧ください。

【実話】オオカミが生態系に及ぼした奇跡!イエローストーン国立公園の例
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守る事が最善ではない

栄養段階カスケードという考え方

生態系や自然環境を考える上で近年活発に議論されるようになった考えが「栄養段階カスケード」です。

栄養段階カスケードとは

「生態系の高次捕食者がその環境に強く関わっており、その減少が、食物連鎖の下位の生物へ順次影響を及ぼす現象」

のことです。

今回のシカの例で簡単に説明します。

日本にはシカを捕食するオオカミがいました。

しかし、オオカミがいなくなるとシカが増え、草木が食べられ、森林が破壊される

このように、生態系の上位の捕食者がいなくなると、生態系の下を支える草木にも影響が出る事が栄養段階カスケードです。

日本でもオオカミを再導入しようとする団体はありますが、

私の考えとして、狂犬病や畜産業へのリスクを考えると、非常に再導入は難しいでしょう。

ということは私たち人がシカの数を調整しないと、生態系が崩れてしまうということです。

一つの生き物を守るだけでは、バランスが崩れる

自然環境を守る

動物を守る

これは素晴らしい意見ですし、協力していきたい内容です。

しかし、その時大事なのは一つの生き物を守るだけでは、自然環境や動物、生態系を守ることには必ずしもつながらないということです。

今回のシカでは、シカだけを守れば、森林が壊れます。

同じような話で、

よく話題になるクジラも、クジラだけを守れば、クジラがプランクトンを大量に食べるので、他の魚の餌がなくなり、私たちの食卓に並ぶ魚も影響を受けます。

今まで生態系を崩してきたのは、私たち人類です。

なら、それを保全するためには、広い視野を持つ必要があるのです。

最後に

たまたま出てきたシカを殺さないでほしい

そう思うことは至って普通だと思いますし、優しい方だと思います。

ただ、そのような感情だけでは必ずしも

シカや自然環境を守ることはできません。

シカは増えすぎているし、田畑を荒らす害獣です。

そして増えすぎると今度は自然環境を破壊してしまうリスクがあるのです。

今回のシカの件を通して、

環境や生態系について考えてもらえたら、嬉しいです。